年59歳になる会社員Mさんからのご相談です。家族は86歳の母、51歳の妻、19歳の長男の4人ご家族です。
ある日、お取引先のご紹介でMさんが相談にみられました。
「母親はアパート経営をしており、今、相続が発生すると、まとまった遺産になると思います。自分には先妻との間に出来た子供もいますが、離婚の 経緯を思うと、できるだけ今の家族に残してやりたいと思っています。母も家の長男を可愛がっておりますし、長男に相続させたいと考えています。」
Mさんには兄弟はいません。気がかりは、Mさんには離婚した先妻との間に子供がひとりおられるということでした。1歳のときに離婚してからは全く会っていないとのことだそうです。先妻との子供さんにも、Mさんの財産を相続する権利があるのです。
まずはじめに、お母さんの財産の評価をしてみました。
母親名義の貸家の評価は、3,000万円。他にもお父様が残した6世帯のアパートを所持しており、この評価額は合わせて3,800万円になり、合計評価額6,800万円となりました。
仮にお母様の相続が発生した場合、Mさんは一人っ子ですのでお母様の全財産を相続します。
ちなみに相続税は80万円程度になるかといったところです。
しかし、Mさん名義の資産はというと、自宅2,000万円、預貯金と退職金合わせて3,000万円。 遺産総額はお母様からの相続分を合わせると11,800万円になりMさんが亡くなった場合の相続税は425万円にもなります。
先妻の子供の法定相続分は4分の1で、遺産総額が11,800万円とすると、2,950万円の相続権があります。例え遺産全部を長男に譲るという遺言書を残したとしても、先妻の子供には1,475万円は最低相続する権利があります。これを遺留分と言います。
その願いを叶えてあげたいのですが、先妻との間に出来た子供にも相続権はあります。 先妻の子供を排除する訳には行きませんので、弊社はMさんの財産をなるべく圧縮する事を提案いたしました。
まず、Mさんの長男をお母様の養子に迎えることとし、全財産を養子である長男さんに託すことにしました。(お母様の相続財産は6,800万円ですので、養子縁組により相続税は掛りません。)
そうすることにより、Mさんの総資産は、自身の名義分5,000万円だけとなり、仮にMさんが、すぐに亡くなった場合でも、奥様に2分の1の2,500万円、2人の息子さんには、4分の1づつの法定相続分を考えれば良いのです。
養子に迎えることにより、相続税の控除額が増えることになることはもちろん、なにより受け渡したい方へ相続できることが、最大のポイントであると考えました。
あとは、Mさんの財産を奥様への居住用財産の贈与を使い自宅を贈与する。
(2,000万円無税)また現預金については自らの老後の生活設計を勘案しながら、単純贈与(110万円無税)を使い少しづつ贈与していく。
先妻の子供には遺言書でまとまったお金を残すことにするなどを提案しました。
Mさんはこの提案に賛同され、実行に移すことになりました。
このように、本当に相続させたい方にきちんと思いを伝えることは可能です。
ただし、先妻のお子様にも遺留分の権限がありますので、その権利を侵さないことは大事です。多くの人が幸せを感じる相続が究極だと思います。
母上の相続に関しては、養子縁組をせずに遺言遺贈でも可能ですが、法定相続人がMさんひとりなので基礎控除60百万円を超える部分(8百万円)について10%の相続税(厳密には×120%)がかかるのと、所有権移転時の登録免許税、不動産取得税について相続の優遇が受けられない点が不利になります。