市に住むNさんの母上は、同市東部に多くの土地を所有する資産家です。
資産のおよそ9割が不動産で、テナントやアパートのほか何ヶ所もの利用していない広大な空地がありました。
Nさんから当グループの税理士へ相談があったのが平成15年のことです。
『母は2年前から入院生活にあり、病状も思わしくありません。相続になったらいったいいくら税金がかかるのか皆目検討がつかないんで心配しています。』
お話を受けた税理士は相続財産の全体を評価することをお勧めし調査を行いました。いわゆる財産目録の作成です。
『うひゃーとても払えない、先生どうしましょう?』
対策として税法上可能ないくつかの対策をお伝えしましたが、幸いにもお母様の具合もその後少し回復されて、それっきりになっていました。
それから2年後の17年5月、ゴールデンウィークも過ぎた頃でした。
不幸にもお母様のご逝去の報を頂戴しました。
さんのご依頼で当センターが申告を含む納税までの手続きの一切を承ることになりましたが、2年前の調査書の数字を眺めて担当者がため息をついたのを覚えています。
その間、幸いだったことが3つありました。
ひとつ目が、最高税率が60%から50%に緩和されたこと。
ふたつ目が、Nさんにはご結婚を前提とされていた方がおられましたが、お母様が亡くなられる前にお母様と養子縁組を済まされていたこと。
最後がこの17年度からの財産評価基準に「広大地評価」の適用が認められたことです。
まさにタイムリー。その分お母様が頑張られたんだなと思っています。
東京などの三大都市では500㎡、都市計画のある地域では1,000㎡、用途が定めていないその他の地域では3,000㎡、それぞれの面積を超える土地の利用については都市計画法で開発許可が必要となっています。
その際、開発道路や緑地帯などの公用地提供が義務付けられるところから該当地の負担分を評価減(45%超)しようというものです。
しかし、困りました。
財産評価減の制度は有難いのですが、何せ出たばかりの通達で、当時は広大地評価を適用するのに、明確なガイドラインがない状態だったからです。
Nさんの相続財産を調査すると適用候補の土地が4ヵ所ありました。さあどうする。
大方の調査が終了した日、Nさんを訪ねました。
「Nさん、できたばかりの評価基準でこういうのがあります。私が調査した限り、2ヶ所は問題ないと思いますが2ヶ所は当局の見解の相違というので否認される可能性があります。
否認されると修正申告で○○千万円くらいの追徴税を覚悟することになりますが。」
Nさんは私どもの方針を支持され、4ヶ所とも広大地評価を採用することになりました。
その代わり後日の納税準備はくれぐれも、“もしも”を盛り込んで用意するようにと。
15年当初の調査評価と比べてどう思われますか?
平成20年に、予定通り国税当局の調査が行われました。
案じていた広大地評価について1ヶ所は否認されましたがこのことによる追徴税は1千6百万円。
既に温めていた資金の一部で無事納税を済ませ決着しました。
その後、広大地評価の基準については次々に網が掛けられてきていますが依然土地資産家には有難い制度です。